スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

柏木集保さんの絶品競馬エッセイ

 宝塚記念の週に「清水成駿サイト」に掲載された柏木集保さんのエッセイはすばらしかった。テーマから構成、競馬的深味、読後の餘韻にいたるまで、すべてに満点の絶品だった。
 

 
 以前も書いたが、「清水成駿サイト」は清水さんの有料予想サイトだが、無料会員登録をすると、月曜から金曜まで掲載される多士済々の競馬エッセイを読むことが出来る。だいぶ前からこれをやっていたので、先日「あなたはまだ会員になっていませんね」と有料会員になるよう催促のメールをもらってしまった。すみません。赤面。

 私は紙芝居というのをかろうじて知っている最後の世代になる。小学校二年ぐらいまで週に二回ぐらい、自転車に乗った紙芝居のおじさんが来ていた。路地裏に自転車を止めると、拍子木を叩いてこどもたちに触れまわる。紙芝居はおじさんから水飴やせんべいを買うことによって見ることが出来る。観劇料金だ。小遣い銭がなくてそれを買えないこどもは、見ようとしてもおじさんに追い払われる。私は母が紙芝居の水飴は不衛生だと小遣いをくれなかったので見られなかった。たまに友人のあとからついて行き、後ろからそっと覗いていると「買わない子は帰った帰った」と追い払われた。くやしかった。惨めだった。でも水飴を買わず無料で見ようとした自分の非は認めているからズルが見つかって恥ずかしくもある。複雑な思いだ。

 清水成駿サイトから「まだ会員になってませんね」と来た通知を読んだとき、水飴を買わず紙芝居を見ようとして追い払われたときの恥ずかしさを思い出した。



 で、こんなことを言ったら身も蓋もないのだが、私は今後も有料予想サイトの会員になることはないだろう。競馬予想は自分でするから愉しいのであって他人の指示された目を買うのはつまらない。
「元調教師が」「元騎手が」「元厩務員が」「東大卒の天才が」「生産者だけが知る情報で」etc……。あんなものに高い金を払うのはどんなひとなのだろう。理解できない。それはまたあらためて書くとして、柏木さんの絶品エッセイのこと。


 テーマは宝塚記念。ルーラーシップの話。
 母はオークス、秋天を勝ったエアグルーヴ、その母はオークス馬ダイナカール。その母はシャダイフェザー。柏木さんがこの一族と関わるリアルタイム競馬はシャダイカールあたりから始まる。シャダイフェザーの姉。ダイナカールは伯母さんの名をもらったことになる。
 思い出話。柏木さんが老調教師ふたりに話を伺っている。テーマはこの「シャダイカールからダイナカールあたりの話」である。老調教師ふたりは、最初はそれを意識してそのあたりを話しているのだが、いつしか話題はどんどん旧いほうへとズレて行き、もっともっと前の馬のことを熱心に語っている。柏木さんの知らない時代の競馬だ。ふと柏木さんと話しているのだったと気づき、またシャダイカールあたりに戻るのだが、やがてまたむかしの話になっている。老調教師がまだ若者だったころの馬の話だ。

 いわゆる「競馬青春」である。誰にも競馬青春がある。いちばん熱く競馬に燃えた時季。初心者だったし、愚かだったけど、その愚かさすらも懐かしいあのころ。話しだすと止まらなくなる。

 老調教師ふたりのそれに触れた柏木さんは、「自分もいつか」と思う。
 ルーラーシップが引退し、種牡馬になり、その仔が活躍する時代、老いた柏木さんが若手と話している。若手が老評論家の柏木さんに訊きたい意見は、ルーラーシップのことと、その母エアグルーヴについてなのだが、いつしか柏木さんはシャダイカールやダイナカール、それらのライバルだった馬のことを熱く語っている。
 そんな日が来るんだろうな、という結び。

 なんとも、気分のいい餘韻の残る、すばらしいエッセイだった。


 
 ところで、この柏木さんのエッセイは、今まで私が読んだ数多い競馬随筆の中でも最高ランクの名文だったが、かといってこれが誰もに最高のものとはならないだろうというのも明白。これは柏木さんにちかい競馬歴をもっていなければ楽しめない文章だ。
 ルーラーシップしか知らない若者はもちろんだが、エアグルーヴからしか知らないひとでも楽しめないだろう。あのオークスの名勝負ダイナカールを知っていることが必要条件なら、老調教師の青年時代はともかく、管理していたダービー馬タケホープ、オークス馬タケフブキ等を知っていることが十分条件になる。

 では老調教師ふたりが熱心に語る、私の知らない、それ以前の競馬も知っている年輩者は、柏木さんのこのエッセイをもっと楽しめたかというと、それもまたちがうと思う。
 この辺多少身勝手なのを承知で言うが、柏木さんのエッセイのフォーカスは、ダイナカールのあたりに絞られている。ならこのエッセイを最高に楽しめたのは、文中に登場するすべての馬と関わっている年輩者ではなく、柏木さんと同世代、柏木さんと同競馬歴のひとになる。そこに向けて発せられたエッセイだから。

 私は柏木さんよりも何年か競馬歴は遅れるのだが、さいわいにして全身でこのすばらしいエッセイを享受することが出来た。
 競馬は世代のものである。どんなに優れた文筆家であれタケホープやダイナカールを知らないひとにこのエッセイは書けない。そしてまたこのエッセイの味わいも、そういうひとには伝わらない。

 四十歳のひとが書いたこの種のエッセイはまだ青い。
 かといって古ければよいわけでもない。ワインに通じる。古すぎるワインは酢でしかない。
 柏木さんの書かれる競馬随筆がいま、最高品質の豊潤の時季を迎えているということなのだろう。それを受けとめられたこと、柏木集保さんと同時代に競馬を出来たことを誇りに思う。
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

moneslife

Author:moneslife
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。